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食物アレルギーといじめ

アメリカのアレルギー学会の講演の勉強から得たことです。海外の報告ですが・・・

・食物アレルギーの子の24%でいじれられたことがあると質問への返答があり、その86%は学校で起こった。

・いじめられた内容の57%が身体的なハラスメントで、例えば、アレルギーの食材を使って、身体に触れてくるなど。

・イタリアでは健常児より食物アレルギーの児は1.89倍、いじめに遭いやすい。

・学校の先生の99%がいじめの回数を過小評価している。

・いじめに遭ったことがある食物アレルギーの児の両親のうち、そのことを知っていたのは50%だけであった。

この報告が現実をどれだけ正しく把握しているかという疑問はありますが、このようなことがあることも事実なのだと思います。アレルギーではない児や周囲の方にも理解を得てもらうにはどうしたらいいでしょうか。この報告では両親の行動について記載がありました。

・いじめのことを知った両親の65%は行動した

49%が校長先生と協議した

47%が先生と協議した

14%がいじめている児およびその両親と会った

・親の行動は行動しない場合の2.1倍、いじめを中止することができた。

・単に両親がいじめのことを知っているだけでは、いじめの解決と関連しなかった。

これはあくまでこの海外の報告を掲載しただけです。文化や考え方が違う日本では、私達が個々のケースに対して考えないといけないのだと思います。

安全性ばかりを追求して、子どもの社会への配慮を忘れてはいけないのだと改めて思いました。

小麦アレルギー

乳児期に発症する食物アレルギーの第3位で、その多くはアトピー性皮膚炎を合併しています。また成人の新規発症アレルギーでは第1位です。多くの料理・加工品に使用されており、除去が必要になると大変な食材と思います。うどんやパスタのような麺類やパンはもちろん、天ぷら、唐揚げ、カレー・シチュー、クッキーなどなど多岐に渡ります。加工品では表示義務のある「特定原材料」なので確認することができます。

離乳食開始時から小麦アレルギーの予測は困難ですので、初めての摂取は1日1回1かけらからです。受診のできる午前中にしてください。そして、パンは小麦だけではなく卵や牛乳を含むものも多いですので、うどんや素麺からにしましょう。また、パンは麺類よりも小麦含有量が多く、食パン1枚とうどん1玉(200g)が小麦から見たら同等の量です。

負荷試験は注意で鶏卵や牛乳と比較して少量の負荷でアナフィラキシーに至り、呼吸器症状(咳、喘鳴)が多いです。小麦に対する抗体は陽性でも、食べても症状がない人も多いので、小麦抗体陽性の信頼は高くありません。しかし、小麦が含むタンパク質の1つであるω-5グリアジンへの抗体は信頼できる指標でクラス4以上ならアレルギー症状はほぼ必発で負荷試験は避けたほうがいいと教えてもらいました。

栄養面:除去による問題はなく、料理中の小麦は米粉やでんぷんで代替しましょう。例:揚げ物の衣はコーンフレーク、米粉パンのパン粉、砕いた春雨で代替。しかし、米粉パンには弾力性をだすために小麦グルテンが入っていることがあります!!!!!!表示の確認をお願いします。

加工食品:醤油は可、味噌・酢も大丈夫なことが多いです。他の麦や穀類で約20%ほどアレルギー症状が出現します。同じイネ科の米、とうもろこしと交差反応を生じるので、必要時は負荷試験で確認が必要です。大麦・ライ麦は交差反応を起こす可能性はありますが、表示義務の対象外です。大麦から煎じた麦茶はタンパク質が抽出されないので多くの方は飲むことができます。

小麦は生で食べることはないので、加熱による抗原性(アレルギーを起こす力)の変化に考慮することはありません。

下の図のように乳幼児期からの小麦アレルギーは治る可能性が十分にありますので、スキンケアをしっかりしながら、負荷試験で確認していきましょう。

小麦に対するアレルギーは他にもあります。パン屋さんの喘息、触るだけで蕁麻疹や皮膚炎が起こる、そして、小麦製品を食べて2時間以内に運動をするとアナフィラキシーを起こす食物依存性運動誘発アナフィラキシーがあります。

小麦とアレルギーの関係は深いのです。字ばかりになってしまいました(-_-;)

一般の方に向けた企画をしたいなぁと思っています。エピペン講習会やスキンケア、喘息の吸入の実技など・・・なかなか、新たな一歩を踏み出すのは難しいなと思います。

食物アレルギー負荷試験の現実の一部

(ホームページ閲覧用)

先程は負荷試験の目的に言及しましたが、しかし、負荷試験は一部の専門機関で行われていることが多く、アナフィラキシーのリスクもあり、煩雑であることから行う側からは敬遠されがちです。人手も必要で、一言で言えば大変です。熊本県内の3万人規模のとある市の状況です。

小中学生併せて、食物アレルギーの割合は4.3%でおおよそ全国平均かと思います。しかし、その中身ですが、

これはまずは原因食品別、小中学生別になっています。OFCは負荷試験のことです。アレルギー人数に対して、負荷試験施行数が極端に少ないです。アレルギー児童数に対する負荷試験施行医療機関が少ないのが原因の1つかもしれません。

一方、教育機関は取り組みをされているのが伺えました。同市で下記のような先生を対象にしたアンケートです。

食物アレルギーやエピペン保有の児の把握はよくされているのが伺えました。今現場に対応が求められているのを感じました。医療機関も協力できるようにしたいと思います。ただ、1つ、この流れを逆に表したのが下記の結果です。

喘息、アトピー性皮膚炎に関しては食物アレルギーとは違う結果でした。社会的な流れ、命に関わる度合いからだと思います。しかし、アレルギー疾患は1人の身体の中で悪影響を及ぼし合いますので、他のアレルギーにも留意していただけたらと思いますし、今後は私自身が努力したいと思います。

食物アレルギーの負荷試験の目的

(ホームページ用記事:facebookでは画像がでません。)

以前、診断のゴールドスタンダードと触れた食物経口負荷試験です。アレルギーが疑われる食品を、一定の時間間隔分割摂取させて、症状の出現の有無、程度を観察する検査です。負荷試験を行う目的は主に下記の2つです。

①食物アレルギー自体の診断・原因食物の特定

②治ったことの確認・食べることができる量の決定

 

①食物アレルギー自体の診断・原因食物の特定について

乳児湿疹などで乳児期に血液検査を行い、抗体が陽性となった食物の除去の指示がでて、未摂取となっている状況で本当に食物アレルギーなのかを診断するために負荷試験を行うことが実際には多いです。また、食物アレルギーの症状が出たが、原因食品と疑われるものが複数ある場合です。どの食品が原因かを特定するために行います。

前提として血液検査では食物アレルギーの診断はできないのです。

上記は複数の除去食品がある食物アレルギー児が専門病院に紹介された結果です。縦軸には抗体のクラス、横軸は人数です。薄いグレーが負荷試験でその食品がアレルギーでないことが証明でき、濃いグレーが本当にアレルギーだった児です。大豆はクラス3や4でも半分以上の児が大豆アレルギーではなく、食べることができています。牛肉に至ってはこの報告では全員が抗体の有無に関わらず、食べることができています。逆に抗体が陰性でも、その食品に対するアレルギーのこともあります。抗体だけでの診断はできないのはこのためです。上記のようにゴマは負荷試験陽性者と陰性者でゴマに対する抗体の値に差がありません。縦軸が抗体の値です。

例外的にはピーナッツアレルギーにおけるAra h 2に対する抗体があります。Ara h 2はピーナッツに含まれるタンパク質の1つで、これに対する抗体が高値の場合は95%以上の確率でアレルギー反応が起こるので負荷試験はできません。今後このような血液検査で診断できる抗体が増えてくるでしょうが、現時点では例外です。

②治ったことの確認・食べることができる量の決定

まず子供の食物アレルギーには治りやすい食品があります。

大豆、小麦、鶏卵、牛乳は治っていく可能性が高いので、抗体の値が低下してくるようなら、確認の負荷試験は有用です。食品によって治りやすい・治りにくいがあるのですね。

ただいきなり治ったことを確認する量を食べるのはリスクがあります。卵なら1個、小麦ならうどん200g、牛乳なら200mlが治ったとする目安の量ですが、量が多いのでアレルギーが治っていないなら、大きなアレルギー症状が起きるリスクがあります。ですから、ステップを踏む必要があります。

順調に卵の負荷試験を進めた症例です。グラフは抗体の値の推移です。このように1回の負荷試験の卵の量を段階的に増やしていき、大きなアレルギー症状の出現のリスクを抑えます。抗体の値の低下も認め、食べることができそうな印象がしました。

牛乳の負荷試験で陽性を示した症例です。シチューで陽性を示していますが、だからといって除去にするのではなく、その前の段階のビスケットの量は定期的に摂取してもらうことが重要です。そして、次のチャレンジで同量をクリアしています。

それが、食べることができる量を決めることの重要性に繋がります。なぜなら、完全に除去をするよりも、微量でも食べることができる量を定期的に食べたほうが治りやすいことが言われています。下記のグラフはきちんと細やかな指導をして定期的に食べれる量を食べ、少しずつ食べれる量を増やしていった群はそうでない群より1年後に食べることができる卵の量が多かったことを示した研究結果です。

以上、負荷試験の目的でした。下記のようにガイドラインでも言われており、今回のまとめです。

卵アレルギーと来年度の負荷試験の試案

ついに乳幼児の3大アレルギー食材に触れます。実はボリュームが多いので敬遠してました。困っておられる方が多いのも事実だと思います。

0〜19歳までの食物アレルギーの原因食物として1位の座に君臨するのが鶏卵です。アレルギーの原因となるのは、ほとんどが卵白中のタンパク質です。その中でも最もアレルギーを起こしやすいタンパク質がオボムコイドです。具体的な名前を挙げたのは、オボムコイドは血液検査で抗体が測定でき、負荷試験の是非の参考になるからです。卵黄摂取でアレルギー症状が出現しても、ほとんどは卵黄に混入した卵白成分が原因と考えられます。ウズラやアヒルなど他の鳥類の卵にも反応する可能性はありますが、魚卵には反応しません。

症状としては他の食品に比較して、腹痛、嘔吐、下痢などの消化器症状が多い傾向があります。

成長とともに治りやすい食材で、3歳までに約30%、6歳までに約70%が症状がでなくなります。治りにくくする要因としては「アナフィラキシーの既往」、「他のアレルギー疾患の合併」、「抗体の値が高いまま推移」が挙げられています。逆にオボムコイドに対する抗体の低下は食べることができるようになってきている可能性を示唆します。

検査に関しては、もちろん、卵白・卵黄、オボムコイドに対する抗体を測定し、参考にします。抗体が高い場合は微量からの負荷試験を考慮します。乳児は卵アレルギーがあっても抗体が陰性になることがあります。その場合は皮膚試験が有用です。皮膚試験までして陰性なら、「う〜ん、大丈夫じゃないかな」と心の中では思ってしまいます。卵アレルギーが治りやすいのは「微量でも摂取継続できていること」、「オボムコイドに対する抗体が低下してきていること」です。ですから、負荷試験を行い、少しずつ食べることができる量を増やして行くのが大切です。

下記は現在試作中の負荷試験の方法です。通常は1日で4回くらいに分割して、少しずつ増やして食べていく検査ですが、システムが整うまでは2回に分割まはた1回で食べる方法を検討しています。ステップ0から開始し、症状が出現しなかったら、1ヶ月程度間隔をあけて次のステップの量の負荷試験を行う方法です。
各ステップをクリアするごとに下記のような加工品の参考資料を使おうと思っています。クリアしたステップの量以下の卵を含有する加工品です。次のステップの負荷試験まで継続した摂取を行う一助になるようにですね。微量の場合は家庭で作るのも難しいので加工品を上手く取り入れていくのがいいと思います。

ガイドラインにも銘記されている「食べられる範囲で食べていく」です。きちんと細やかな指導をして定期的に食べれる量を食べ、少しずつ食べれる量を増やしていった群はそうでない群より1年後に食べることができる卵の量が多かったというのが下の報告です。

卵の抗原性(アレルギーを引き起こす力)は調理法で変化します。加熱の条件では固ゆで卵でも12分の加熱では11.8%、20分の加熱では6.1%にオボムコイドの抗原性は低下します。加熱時間の短い炒り卵ではオボムコイドの抗原性はほとんど低下しません。また、加熱に加えて、小麦が加わることでさらなる抗原性の低下があります。クッキーやカステラ、パンなどでは実際に使われている卵の量より抗原性は低下しています。しかし、実際どれくらいなのかと具体的な話はできません。ですから、卵の抗原性の話は難しいのです。

卵は理想的なタンパク源です。除去が必要な場合は動物性・植物性タンパク質で補いましょう。赤身の肉や魚(ヘム鉄も豊富)、大豆や乳製品を意識して摂取しましょう。卵黄には鉄も多いので、鉄分の摂取も大切です。調理面での置き換えは①起泡性→重曹、 ②凝固性(つなぎ)→豆腐+片栗粉、すりおろしたイモやレンコン、牛乳(豆乳)にひたしたパン粉(米パン粉)などを利用します。

基本的に除去の必要がないものとしては、鶏肉、魚卵、卵殻カルシウムです。逆に卵に含まれる塩化リゾチームが総合感冒薬、鎮咳薬、外用薬に含まれることがあるため、使用しないよう注意してください。

また卵アレルギーに関してはまとめなおします。