保育士さんの質問に答える その5

「きょうだい児がアレルギーだとアレルギーの確率は上がるのか?」

喘息からいきましょう。2歳未満では喘息の診断は非常に難しいです。それは身体が小さい分、気管支の内腔が狭いのでちょっとしたことで、空気の出入りがしにくくなり、喘息のときのヒューヒューが聴こえます(たとえば鼻汁でも)。多くの報告で、乳児のときにゼェゼェを繰り返していても、年長児に喘息と診断されるのはそのうちの15〜30%と言われています。しかし、実際には今、目の前の乳児が喘息なのかどうかを知りたいので、それを予測するための項目があります。(小さい項目は省略)

必須条件は年に4回以上ゼェゼェするという前提で

親の喘息 または ・アトピー性皮膚炎がある

いずれかを満たすとその乳児は喘息の可能性が高いことになります。喘息患者さんには家族がアレル ギー疾患であることが多く、そうだと喘息を発症するリスクが高くなります。

しかし、みんながみんな、喘息にならないことからもわかりますように、決して遺伝的な要因だけで喘息になるわけではありません。環境の影響もあると言われています。

アトピー性皮膚炎に関しての報告では・・・

双子を6996組集めるとその中でアトピー性皮膚炎は4.3%でした。双子がふたりともアトピー性皮膚炎であったのは一卵性双生児では15.4%、二卵性では4.5%と一卵性が上回っていたことから、遺伝の影響はあることがわかります。しかし、それほど高い割合でもないので、遺伝だけではなく、環境などの他の要因もあると言われています。

食物アレルギーでも同様の報告が多いです。兄弟に食物アレルギーの子がいる場合、そうでない場合より2.6倍食物アレルギーを発症しやすいなど。しかし、他にも要因はあり、そのうちの1つであるアトピー性皮膚炎は最近有名なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

この質問に対する答えは“イエス”です。ただ、それはあくまで目の前の子がアレルギー疾患になりやすい要因を1つ持っているのであって、アレルギー疾患を必ず発症するわけではありません。

今回は画像がなく、字ばかりで見にくくなり、すみません。

保育士さんの質問に答える その4

「虫刺されの症状のひどい子とアレルギーは関連があるのか?」

イレギュラーな質問に悶絶してます。

虫刺されの腫れに個人差があるのは、保育士の先生方が経験されることではないでしょうか。では、なぜ、虫刺されは赤く腫れ、痒いのか?

虫刺されの跡が赤く腫れるのは、蚊が皮膚に注入する唾液成分へのアレルギー反応です。しかも、2つの異なる種類のアレルギー反応が引き起こされます。

即時型反応:これは抗体が主役のアレルギーです。刺された直後から赤く腫れ、数時間で軽快します。翌日にはすっかりよくなっています。

遅延型反応:刺された数時間後から赤くなり始め、翌日に腫れがピークに達し、1週間かけてよくなります。

蚊にさされる経験が増えるとアレルギー反応は変化していきます。最初は即時型反応だけが起こりますが、蚊に刺される経験が増えると遅延型反応が生じてきます。腫れ・痒みが数日続くようになるのです。さらに蚊にさされる経験を重ねると刺された直後の腫れは軽くなり、数時間後から腫れ始める遅延型反応が目立つようになります。それを超えて蚊に刺されると反応しなくなるというのです。

この2つのアレルギー反応の違いは本ホームページの“アレルギーの種類による皮膚テストの違い”でも触れております。

→http://kumanann-allergy.com/2017/08/03/アレルギーの種類による皮膚テストの違い/

食物アレルギーや花粉症の児が蚊に刺されたときのアレルギー反応が大きくなるかどうかは記載がありませんでした。・虫の種類、・刺される児の年齢、今までに刺された回数は関係するようです。

即時型反応には抗ヒスタミン薬の内服、遅延型反応にはステロイド軟膏が基本です。起こるアレルギー反応の種類でお薬の種類が変わります。

これでよろしいでしょうか?(-_-;)

食物アレルギーといじめ

アメリカのアレルギー学会の講演の勉強から得たことです。海外の報告ですが・・・

・食物アレルギーの子の24%でいじれられたことがあると質問への返答があり、その86%は学校で起こった。

・いじめられた内容の57%が身体的なハラスメントで、例えば、アレルギーの食材を使って、身体に触れてくるなど。

・イタリアでは健常児より食物アレルギーの児は1.89倍、いじめに遭いやすい。

・学校の先生の99%がいじめの回数を過小評価している。

・いじめに遭ったことがある食物アレルギーの児の両親のうち、そのことを知っていたのは50%だけであった。

この報告が現実をどれだけ正しく把握しているかという疑問はありますが、このようなことがあることも事実なのだと思います。アレルギーではない児や周囲の方にも理解を得てもらうにはどうしたらいいでしょうか。この報告では両親の行動について記載がありました。

・いじめのことを知った両親の65%は行動した

49%が校長先生と協議した

47%が先生と協議した

14%がいじめている児およびその両親と会った

・親の行動は行動しない場合の2.1倍、いじめを中止することができた。

・単に両親がいじめのことを知っているだけでは、いじめの解決と関連しなかった。

これはあくまでこの海外の報告を掲載しただけです。文化や考え方が違う日本では、私達が個々のケースに対して考えないといけないのだと思います。

安全性ばかりを追求して、子どもの社会への配慮を忘れてはいけないのだと改めて思いました。

保育士さんの質問に答える その3

画像はクリックすると拡大します。

「アレルギー疾患の種類と症状について知りたい」

アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーと一度は耳にしたことがある病名ばかりだと思います。

でも、ここで仲間外れがあります。そう、食物アレルギーです。食物アレルギーだけがアレルギーを引き起こす原因(食物)が病名となり、残りのアレルギー疾患は症状が病名になっています。

また、別のグループ分けができます。それは①抗体と原因物質の反応が主な原因であるものと、②抗体と原因物質の反応は症状を悪化させる要因の1つに過ぎず、身体の内側からもアレルギー反応が起こるものがあります。

病名で言うと①の要素が強いのがアレルギー性鼻炎や食物アレルギーです。原因の花粉や食材との接触がなければ症状はありません。ですから、治療の第一歩は原因物質の回避です。症状が出現した時に薬剤を使用します。②の要素が強いのが気管支喘息とアトピー性皮膚炎です。抗体が反応する物質を避けるだけでは症状のコントロールは限局的で、身体の内側から起こるアレルギー反応を日頃から薬剤を使用し、沈静化する必要があります。その主な薬剤がステロイドです。吸入や軟膏塗布になります。

以上が大きな枠組でのアレルギー疾患のグループ分けになります。

原因物質(食物)が病名となっていた食物アレルギーですが、症状により、さらにグループ分けされます。原因食材を摂取し、2時間以内に蕁麻疹や呼吸苦、腹痛が起こるのは即時型の食物アレルギーです。これが一般的に言うところの食物アレルギーです。そのような症状以外に、以下の分類があります。

①食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎

これはきちんとしたスキンケア、正しい量のステロイド軟膏塗布を行っていても、コントロールできないアトピー性皮膚炎がある時に疑います。ある特定の食材がアトピー性皮膚炎の悪化因子となっているのです。

適当な症例を担当したことがないので、書籍からの抜粋です。原因食材を除去したら、アトピー性皮膚炎が改善します。しかし、アトピー性皮膚炎が改善しない原因の多くはアレルギーの食材があるのではなく、スキンケアや軟膏塗布量に問題があるのです。

②新生児・乳児消化管アレルギー

頻度は少ないですが、通常の食物アレルギーのように蕁麻疹などの皮膚症状を認めないので、診断は難しいと思います。ミルクを飲むと嘔吐する、熱や血便がでる、体重の増加が不良であるときはこのアレルギー疾患を想起しましょう。抗体が関与するアレルギーではありません。

③口腔アレルギー症候群

生の果物・野菜を摂取すると、口の中が痒くなるアレルギーです。花粉症が原因です。抗体が反応する花粉の成分が果物・野菜にもあるため、生の果物・野菜の摂取でアレルギー反応を認めます。加熱されたジャムや高圧処理された缶詰は摂取できることが多いです。また、胃に入ると胃液で抗体が反応する成分は分解されますので、全身の症状が起こることは少ないです。

④食物依存性運動誘発アナフィラキシー

食べるだけ・運動だけでは症状はなく、原因食材を食べて2時間以内に運動をすると症状が出現します。

原因は小麦が多く、症状は重症です。学童に限ると、甲殻類が多いようです。エピペンが必要です。

 

保育士さんの質問に答える その2

画像はクリックすると拡大します。

「アレルギーに対処する上で日頃から準備すべき事や物は?」

ここでは質問のアレルギーのことは食物アレルギーとしました。

まずはその子のアレルギーの状況を把握することです。保育所・保護者・主治医が共通理解の元に、アレルギーを持つ乳幼児に対する取り組みを進める目的に【保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表】の利用が「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」で提示されています。

実物はこちらから・・・http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/hoiku03_005.pdf

これで、アレルギーの種類、アレルギーの原因食材、診断根拠、治療内容、注意事項が把握できます。欲を言えば、それぞれの食材でどのような症状が出現したのかも把握できるといいと思います。どのような症状が起こりやすいかを事前に知っておいたほうが対応しやすいですから。

症状出現時に備えて、一人一人に救急セットを作成しておくのが望ましいと思います。救急セットに入れておきたい物は・・・

まずは①マニュアルです。定期的に症状出現時の対応を練習していても、いざというときは慌てて、頭に真っ白になる可能性があります。マニュアルを印刷して救急セットに入れておきましょう。下記のリンクをクリックするとPDFでダウンロードできます。

食物アレルギー緊急時対応マニュアル – 熊本県教育委員会

上記PDFには初期対応の手順、具体的な役割分担の内容、症状チェックシートとそれに応じた投薬、エピペンの使い方、119番の仕方、心肺蘇生の方法が掲載されています。もちろん、症状出現時に初めて見ながら対応するのは無理ですから、定期的にこのマニュアルを参考にしながらの練習は必須だと思います。

②エピペン:トレーナー(練習器)ではなく、本物であることを確認使用期限は1年間ですので、定期的な訓練の度に確認しましょう。

③緊急内服薬、紙コップ:処方されている場合

④緊急対応経過記録表:下記マニュアルのp80が参考になります。

http://www.city.himeji.lg.jp/var/rev0/0103/4913/manual.pdf

⑤保護者緊急連絡先:自宅だけでなく、携帯や職場など複数記載

⑥主治医緊急連絡先:クリニックの時は診療時間も記載、また休診日や夜間の医療連携先の連絡先も記載

⑦タオル・ビニール袋:嘔吐に備えて

⑧レジャーシート:濡れた床面に寝せないといけない時

(⑨携帯用酸素:使用期限の確認)

①〜⑨までをセットにして、保管しますが、養護教員だけでなく、保育士全員が把握している場所に、鍵はかけないで、かつ子供たちが触れない場所に置いておくようにしてはいかがでしょうか。

そして、日頃のシュミレーションも忘れず、定期的に実施してください。また、私共の主催する勉強会も利用していただけると幸いです。対象の保護者様に9月4日、熊本労災病院で開催の卵アレルギーの勉強会の宣伝もお願いします。

なお、学校でのアナフィラキシーの具体的な対応の解説は下記の本が役に立つと思います。私も今回大いに参考にしました。

http://amzn.to/2vI8lOp