吸入指導ーpMDI+スペーサー編ー

前回はpMDIであるスプレータイプの吸入薬を吸入の仕方を説明しました。このpMDIには吸入の同期という難しい一面があります。押すという動作と吸うという動作をほぼ同時に行わないといけません。2つの動作を同時にというのはなかなか難しいです。特に乳幼児や高齢者、脳血管障害や麻痺を持っている患者様にとっては、この吸入の同期ができないことが多く、吸入療法を導入・継続する壁となります。その壁を乗り越える手段がスペーサーです。下のように筒のような構造です。これは小児アレルギー学会が3つのスペーサーを推奨していますが、その1つのエアロチャンバーです。年齢により3種類あります。5歳〜高齢者用のマスク付きとくわえるマウスピースタイプを並べています。右側の写真が吸入器の差込口になります。

では、実際に吸入器をスペーサーにつけてみます。

スペーサーの中に薬剤を噴霧して一旦貯めるので、吸入器を押した瞬間に、“慌てて吸う”必要はありません。

模範例の動画です。環境再生保全機構提供のもので成人の例です。

この動画の中にもありましたが、吸い方が“ゆっくり深く1回吸う”と“スペーサーをくわえたまま数回普通の呼吸をする”の2種類がありました。このことについて触れます。

吸入器から噴出された薬剤の何%が肺にちゃんと入るかを比較した結果です。“ゆっくり深く1回吸う” vs. “スペーサーをくわえたまま数回普通の呼吸をする”で比較します。

“ゆっくり深く1回吸う”のほうが肺にきちんと入る薬剤の量は多いことを示す結果です。そう、1回、ゆっくり大きく吸うことができる方はそうしたほうがいいです。しかし、乳幼児や高齢者、認知症や脳血管障害がある方の中には“ゆっくり深く1回吸う”ことができない方もいらっしゃいます。その場合は吸入器をくわえたまま、またはマスクを顔に押し当てたまま普通の呼吸を5回程度してもらえばいいと思います。スペーサーを使わなかったときの薬剤の分布が下の表です。pMDIをスペーサーなしでも上手に吸入できると思われる11〜14歳では薬剤の54%が肺内に入っていることになりますが、これは5回呼吸をしてもらった結果の上のグラフの11〜17歳と同等です。

                                       (ERJ 2003; 21: 1007–1011)

ですから、吸入のために大きな吸気ができない方は普通に呼吸をしてもらっているところにスペーサーのマスクを押し当てるなりマウスピースをくわえてもらえばいいのではないでしょうか。赤ちゃんは寝ている時がよさそうですね。

もうひとつスペーサーのお得情報としては口の中や喉への薬剤の沈着が少なくなることです。スペーサーを使わず吸入器から直接吸入すると40-60%薬剤が口や喉に残りますが、スペーサーを使うとそれが10〜25%に減少します。

このように吸入器から噴出される薬剤の粒の大きさはマチマチです。小さな粒子は肺まで吸い込まれますが、大きな粒子は口の中や喉に残ります。薬剤を一旦スペーサーの中で噴出すると大きな粒子はそのままスペーサーの壁にくっついて、小さな粒子だけが口の中に吸い込まれていくのです。

吸入器を押すことと、吸い込む動作が同時にできない場合はスペーサーをご検討ください!

本日の講演資料

本日は人吉球磨学校給食会研修会にご招待いただきまして、誠にありがとうございました。エピペンのロールプレイが実現できず、申し訳ありませんでした。前もって場所の状況を調べておくべきでしたし、時間も足りなかったですね。別の機会にお願いします。下記は講演中にお知らせした資料で、パスワードロックがかかっておりますので、解除してください。第三者への閲覧はこの資料はご遠慮くださいますようお願いします。

人吉球磨学校給食会研修会 前半

人吉球磨学校給食会研修会 後半

水曜の午後の外来も何卒宜しくお願いします(14:00〜15:30)。予約はいらないです。

また、学校関係でアレルギー疾患が問題になっていることが、まだ

勉強会御礼と今後の予定

本日は労災病院での院内勉強会の開催およびご出席、誠にありがとうございました。多忙な日勤勤務の直後にも関わらず、多くの方が聴講していただいて感激しました。

アレルギーのケアは特別な資格は必要なく、スキンケアのやり方や食事のアドバイス、吸入のやり方で大きく患者さんのアウトカムを変えることができる疾患だと思います。ご家族や近所の方にもちょちょっと教えるとその患者さんは楽になると思います。だから、一人でも多くの方に伝えることができたことは嬉しいことでした。

今後は

5/25 人吉球磨学校給食会研修会:エピペンのロールプレイを組み入れるか、主要食材の話を追加するか検討中です。

6/26 熊本市内で保母さん対象にご依頼いただいております。

6/29 熊本労災病院の公式行事である地域医療連携の会

10月に人吉市保育園連盟主催の研修会が只今調整中です。

私としては、この他に市民公開講座ができたらなぁと思う次第です。実際に保護者の方と軟膏を塗ったり、スキンケアをしたり、吸入の仕組みから吸入指導をしたり・・・除去食の料理教室もいつかできたらいいですね。夢はいくら見てもタダですから。

吸入指導 -pMDI編- スペーサーまで届かず・・・

気管支喘息の治療には日頃からの炎症を抑える治療であるステロイド吸入が大切であることは今までの記事でアップしてきました。今日はその吸入薬の実際の吸入の仕方についてアップします。

まず、吸入薬に大きく2つの種類があります。略語ですが、pMDIとDPIです。pMDIはスプレーのイメージです。ボンベを押すとシュッと霧状・ミスト状の薬剤が出てきます。DPIは粉の薬剤を自ら吸い上げて吸入します。それぞれ特色があり、使い分けがあります。年齢という観点から使い分けた例が下の図です。

乳児から幼児はスペーサーをつけたpMDI、幼児から学童期に入る頃にDPIへ、そして、高齢になり、吸入する力が落ちてきたらpMDI±スペーサーというのを示しています。

この記事ではpMDIについて触れます。pMDI製剤は薬剤と噴射剤がボンベに充填されており、ボンベのお尻を押し込むことで霧状の薬剤が噴霧される仕組みです。

では、早速吸入の仕方は・・・いえいえ、その前にやらないといけないことがあります。2つもあります。

①吸入薬を振って、ボンベの中の薬剤を混ぜないといけません。ボンベの中には薬剤と噴霧剤が入っています。容器を十分に振ってその両者を均一にしておくことが必要です。マニアックな話になりますが、薬剤と噴霧剤が最初から均一になっていて、振る必要がない吸入薬があるのも事実です。しかし、その製剤はステロイド吸入単剤です(キュバール、オルベスコ)。多くの場合、発作時には気管支拡張薬のpMDIを吸入することになりますが、この気管支拡張薬のpMDIは吸入前に振らないといけません。もう、単純化してpMDIは吸入前に振ると覚えたほうがいいです。

②新しい吸入薬を最初に使う時はカラ噴霧をしなくてはなりません。製剤によって回数が違います。また、人間忘れるものですから、数日吸入していなかったときもこのカラ噴霧は必要です。各吸入剤のカラ噴霧回数です。

さぁ、いよいよ吸入です。吸入薬を手に持って・・・ここにも落とし穴があります。そう、ボンベの向きです。日常生活にあるスプレーはヘアスプレーも殺虫剤も掃除洗剤もボンベは下向きで押します。ところが、pMDIの吸入薬は反対のボンベは上向きなのです!!この向きでないと一定量の薬剤が噴霧されません。

ボンベを正しい向きで持ったら、吸入器をくわえる前にかるーく息を吐きます。そして吸入口を軽くくわえてシュッとボンベを押して噴霧します。

ボンベを押すと同時に吸入するのですが、息を吸い込むスピードもとても大切です。急いで吸い込んではいけないのです。深呼吸するようにゆっくり5秒かけて吸い込みます。息を吸い込むスピードで薬剤の肺への届き方が違います。勢いよく吸い込むと肺の手前の気管に薬剤がくっついてしまい、肺に到達できる薬剤の量は少なくなります。

吸い込んだあとにもコツがあります。吸い込んでそのまま息を吐くと、せっかく吸い込んだ薬剤がそのまま出てきてしまいます。ゆっくり吸い込んだ後は息をとめましょう。ゆっくり5秒数えてください。気管支拡張薬を吸入し、息を止める時間を変えて肺機能の改善を比較した試験です。4秒よりは10秒がいいようですが、無理のない範囲で行いましょう。

吸入後は、口腔内のカンジダ(カビ)症にならないようにうがいを行って下さい。これは耳鼻科の先生に教えてもらったことですが、口腔内のカンジダ症になる人は、吸入を寝る前に行っている人に多いとのことでした。口腔内のカンジダ症を繰り返す方は朝起きてから夕食までの間に吸入したほうがいいと思います。

力が入りにくい方は、ボンベを押すのも大変だと思います。ある程度の力が必要です。でも、薬局にはテコの原理を利用して力をさほど必要とせずボンベを押せる補助器具があります。無料です。

この力の単位がわかりませんが、補助器具をつけることで押す力が半分くらいで済むようになります。ボンベを押すのに一苦労という方は薬局で申し出て下さい。

スペーサーの話までアップする予定でしたが、力尽き・・・本日はpMDIのみとさせていただきます。

吸入の仕方は実際に動画を視聴したほうが絶対にいいと思います。Youtubeにも製剤ごとに視聴できます。

フルティフォーム:https://www.youtube.com/watch?v=RK_KezDMisA

アドエアエアゾール:https://www.youtube.com/watch?v=XClKvOOXp0c