喘息発作時のみの治療は✕(ダメ!)ー長期的展望から

ホームページ用記事です。

前回は発作治療薬=気管支拡張薬だけで喘息の治療を行うと、大きな発作に繋がる可能性(短期的な展望)があることを挙げました。今回は将来的な影響についてです。

皮膚での炎症は見えるのでみなさんもご存知かと思います。赤くなり、腫れぼったく、正常の皮膚よりも刺激に敏感です。また痒みを伴います。これが炎症です。喘息ではこのような炎症が気管支の中で起こっており、日頃目にすることはできません。この炎症が持続すると気管支の構造が変化します。また、発作により気管支の収縮が起こり、この収縮自体も気管支の構造が変化する原因です。

実際の変化が下のイラストです。顕微鏡で気管支の表面を見ています。イラストの上が表面です。炎症でも収縮でも気管支の構造は変化しますが、下のイラストは気管支を薬剤を投与して収縮を反復させた結果です。気管支の壁の1つの層が厚くなっています。また、赤紫色に染色された痰を産生する細胞も増えています。

このような気管支の構造変化が①肺機能の低下をもたらし、②小児喘息の治癒を阻害に繋がります。

①肺機能の低下:949人の喘息の子供達の肺機能を毎年検査したのが下のグラフです。横軸:年齢、縦軸:肺機能を示しています。肺機能は20歳台前半でピークを迎え、そこから徐々に低下をします。1番上の青色の実践は喘息ではない子供のグラフになります。すると肺機能のピークと肺機能のピーク後の低下から4つのパターンに別れます。949人の喘息の子供達はこの4つのパターンにおおよそ均等に別れました。しかも、肺機能の成長が抑制された③④のグラフには喘息のコントロールが悪い子供が多かったとのことでした。

②治癒の阻害:7歳の子どもたちを7年毎に検査して、50歳まで経過を追ったのが下のグラフです。

横軸:年齢、縦軸:治癒率です。明らかに喘息が重症だと治癒している割合が低いです。

発作は軽いものも含めて起こさないように毎日の治療が重要となります。発作治療薬で起こった発作を改善させることだけでは治療不十分なのです。

 

 

 

 

食物アレルギー負荷試験の現実の一部

(ホームページ閲覧用)

先程は負荷試験の目的に言及しましたが、しかし、負荷試験は一部の専門機関で行われていることが多く、アナフィラキシーのリスクもあり、煩雑であることから行う側からは敬遠されがちです。人手も必要で、一言で言えば大変です。熊本県内の3万人規模のとある市の状況です。

小中学生併せて、食物アレルギーの割合は4.3%でおおよそ全国平均かと思います。しかし、その中身ですが、

これはまずは原因食品別、小中学生別になっています。OFCは負荷試験のことです。アレルギー人数に対して、負荷試験施行数が極端に少ないです。アレルギー児童数に対する負荷試験施行医療機関が少ないのが原因の1つかもしれません。

一方、教育機関は取り組みをされているのが伺えました。同市で下記のような先生を対象にしたアンケートです。

食物アレルギーやエピペン保有の児の把握はよくされているのが伺えました。今現場に対応が求められているのを感じました。医療機関も協力できるようにしたいと思います。ただ、1つ、この流れを逆に表したのが下記の結果です。

喘息、アトピー性皮膚炎に関しては食物アレルギーとは違う結果でした。社会的な流れ、命に関わる度合いからだと思います。しかし、アレルギー疾患は1人の身体の中で悪影響を及ぼし合いますので、他のアレルギーにも留意していただけたらと思いますし、今後は私自身が努力したいと思います。

食物アレルギーの負荷試験の目的

(ホームページ用記事:facebookでは画像がでません。)

以前、診断のゴールドスタンダードと触れた食物経口負荷試験です。アレルギーが疑われる食品を、一定の時間間隔分割摂取させて、症状の出現の有無、程度を観察する検査です。負荷試験を行う目的は主に下記の2つです。

①食物アレルギー自体の診断・原因食物の特定

②治ったことの確認・食べることができる量の決定

 

①食物アレルギー自体の診断・原因食物の特定について

乳児湿疹などで乳児期に血液検査を行い、抗体が陽性となった食物の除去の指示がでて、未摂取となっている状況で本当に食物アレルギーなのかを診断するために負荷試験を行うことが実際には多いです。また、食物アレルギーの症状が出たが、原因食品と疑われるものが複数ある場合です。どの食品が原因かを特定するために行います。

前提として血液検査では食物アレルギーの診断はできないのです。

上記は複数の除去食品がある食物アレルギー児が専門病院に紹介された結果です。縦軸には抗体のクラス、横軸は人数です。薄いグレーが負荷試験でその食品がアレルギーでないことが証明でき、濃いグレーが本当にアレルギーだった児です。大豆はクラス3や4でも半分以上の児が大豆アレルギーではなく、食べることができています。牛肉に至ってはこの報告では全員が抗体の有無に関わらず、食べることができています。逆に抗体が陰性でも、その食品に対するアレルギーのこともあります。抗体だけでの診断はできないのはこのためです。上記のようにゴマは負荷試験陽性者と陰性者でゴマに対する抗体の値に差がありません。縦軸が抗体の値です。

例外的にはピーナッツアレルギーにおけるAra h 2に対する抗体があります。Ara h 2はピーナッツに含まれるタンパク質の1つで、これに対する抗体が高値の場合は95%以上の確率でアレルギー反応が起こるので負荷試験はできません。今後このような血液検査で診断できる抗体が増えてくるでしょうが、現時点では例外です。

②治ったことの確認・食べることができる量の決定

まず子供の食物アレルギーには治りやすい食品があります。

大豆、小麦、鶏卵、牛乳は治っていく可能性が高いので、抗体の値が低下してくるようなら、確認の負荷試験は有用です。食品によって治りやすい・治りにくいがあるのですね。

ただいきなり治ったことを確認する量を食べるのはリスクがあります。卵なら1個、小麦ならうどん200g、牛乳なら200mlが治ったとする目安の量ですが、量が多いのでアレルギーが治っていないなら、大きなアレルギー症状が起きるリスクがあります。ですから、ステップを踏む必要があります。

順調に卵の負荷試験を進めた症例です。グラフは抗体の値の推移です。このように1回の負荷試験の卵の量を段階的に増やしていき、大きなアレルギー症状の出現のリスクを抑えます。抗体の値の低下も認め、食べることができそうな印象がしました。

牛乳の負荷試験で陽性を示した症例です。シチューで陽性を示していますが、だからといって除去にするのではなく、その前の段階のビスケットの量は定期的に摂取してもらうことが重要です。そして、次のチャレンジで同量をクリアしています。

それが、食べることができる量を決めることの重要性に繋がります。なぜなら、完全に除去をするよりも、微量でも食べることができる量を定期的に食べたほうが治りやすいことが言われています。下記のグラフはきちんと細やかな指導をして定期的に食べれる量を食べ、少しずつ食べれる量を増やしていった群はそうでない群より1年後に食べることができる卵の量が多かったことを示した研究結果です。

以上、負荷試験の目的でした。下記のようにガイドラインでも言われており、今回のまとめです。

ステロイド軟膏に対する抵抗感

アトピー性皮膚炎の治療としてステロイド軟膏の塗布が標準治療として、現在ガイドラインでも推奨されています。しかし、ステロイドに対する不安からステロイド軟膏が使用できない方がいらっしゃるのも事実です。この問題はとても根深く難しいので、私のようなアトピー性皮膚炎の治療歴の浅い者が話すのは難しいですが、質問がありましたので、答えさせていただきます。

アトピー性皮膚炎は①皮膚のバリア機能低下②アレルギーの起こりやすい体質→炎症が起こりやすい、が病気の形成に関与していいます。

皮膚のバリア機能が低下していると様々な環境中の刺激物質により皮膚に炎症が引き起こされます。炎症により痒みが生じ、皮膚を掻いてしまう。掻くことでさらに皮膚のバリア機能が低下し、環境中の刺激物質に反応しやすくなるのです。また、掻くこと自体が炎症を悪化させます。こうして悪循環のサイクルに入り込んでしまう。この悪循環を断ち切るためには、①皮膚のバリア機能を補修する、②炎症を沈静化する が2大柱です。炎症を沈静化させる代表の薬剤がステロイド軟膏になります。ステロイドを塗ること自体ではなく、炎症を沈静化させることが治療目標です。ステロイドはその炎症を沈静化させる力があるので、私達は治療に用います。

軟膏のステロイドは、体内で産生されるステロイドホルモンを人工的に合成したものです。そう、元来私達の身体の中で分泌されいるホルモンの1つです。症状の程度に併せて使用できるよう、5つの強さの種類があります。

ステロイドに対する抵抗感を生じる原因の1つは副作用です。全身性と塗った場所のみの局所性の副作用があります。全身の副作用は、“血糖値が高くなる”、“胃粘膜の障害”、“血圧を高くする”、“骨粗鬆になりやすくなる”、“感染しやすくなる”など、どれも怖くなるような副作用があります。しかし、これはステロイドを点滴したり、内服したりしたときの副作用です。軟膏や喘息の治療薬のステロイド吸入薬はほとんど全身に入っていくことはなく、全身の副作用はほとんど起こりません。逆にそうだからこそ、内服よりも面倒な軟膏塗布や吸入が治療薬として選ばれるのです。効果はそのままに副作用を少なくです。確かに大量のステロイド軟膏を塗り続ければ、全身性の副作用を起こす可能性はあります。個人差はありますが、その量は1日にステロイド軟膏4本(=20g)を毎日全身に3ヶ月程度塗布したときです。毎日全身ベトベトにステロイド軟膏を数ヶ月塗り続けないといけないくらい重症のアトピー性皮膚炎であれば、全身の副作用が出現していないか検査が必要ですし、免疫抑制剤の内服など1歩治療ランクをアップすることを検討しないといけないでしょう。

長期間塗った場所に関する局所性の副作用としては“うぶ毛が生える”、“ニキビができやすい”、“毛細血管が目立つ”、“皮膚が薄くなる”、“皮膚に線ができる”などがあります。これはあくまで長期に連日塗ったときです。“皮膚に線ができる”以外はステロイド軟膏の塗布量が減ると回復傾向となります。やっぱり副作用はあり得るではないかと思われるかもしれません。だからこそ医師の元、正しい塗り方をしないといけません。

炎症が持続すると、その身体の部位は構造変化を起こします。皮膚でしたら、厚くなりゴワゴワして、黒くなります。喘息だと気管支が硬くなり肺機能が低下します。アレルギー炎症の持続はその場の構造を変えてしまうのです。下記のイラストは気管支の断面図です。喘息児では壁が厚くなって空気の通り道が狭くなっています。この変化は改善しないと考えられています。

また、アレルギーの炎症は連鎖して他のアレルギーを起こします。乳幼児期のアトピー性皮膚炎だと食物アレルギーを引き起こしてきます。喘息の発症も多くなります。アレルギー性鼻炎があると喘息のコントロールが難しくなります。小児喘息が治らず、成人喘息に移行するのも日頃の炎症の沈静化ができていない方が多いです。

ステロイドを塗る塗らないというよりはその皮膚の炎症をどう沈静化するかを考えないといけません。炎症も最初のうちであれば薬剤も少なくで済みますが、時間が経った勢いのある炎症にはそれなりの量のステロイドが必要です。喘息の発作時には軟膏や吸入の比にならないくらいの大量のステロイドでまずは勢いのついた炎症を沈めにかかります。花粉症の場合も症状が出てから、治療をしても十分に症状が抑えられないと、次のシーズンからは症状が出る前の花粉が飛び始めたときから薬剤の使用を開始します。まだ炎症が起こり始めの小さなときから治療を開始すると、薬剤の量も少なくて済むし、症状も軽くなります。

具体的には痒みがあり赤くなっている状態をステロイド軟膏の塗布で速やかに沈静化します。数日で赤みは改善しますが、目に見えない炎症がまだくすぶっていますので、そこで軟膏を塗るのを中止するとすぐにぶり返します。また湿疹と湿疹の間の一見正常に見える皮膚にも炎症がありますので、湿疹間にも塗布します。赤みがひいて+1週間塗布し、それから減量に入ります。まずは1日2回を1回に、それから徐々に減らしていき、その方に必要な回数を見つけていきます。週2回や週3回の方もいれば、保湿剤だけでもコントロールできることもあります。もちろん、皮膚のバリア機能は弱いので、保湿剤の1日2回の塗布は継続しないといけません。これができていないと外部からの刺激により炎症をすぐ引き起こします。また、最初に十分量のステロイド軟膏を使用し、炎症を速やかに沈静化することが大事です。副作用が怖いからと少しの量を擦り込むようにすると結局は炎症が長引いて悪循環のサイクルを断てないですし、ダラダラと長期に渡ってステロイド軟膏を塗布することとなります。喘息の治療も症状がない状態が数ヶ月続いて、検査をして気道炎症がないなど確認した上で薬剤の減量を1つずつしていきます。

呼吸器内科医として喘息の治療をしていたときにはステロイドに対する拒否感がある方はあまりいらっしゃいませんでした。心配して質問されることはありましたが、短期間のステロイド投与により得られる効果と心配される副作用を説明すると、治療を受けていただいていました。喘息の治療のステロイド量が桁違いに多いですが、それでもやはり見た目の副作用があるアトピー性皮膚炎ではステロイドに対する不安や批判から使用できない方がいらっしゃる印象です。

患者様が受け入れられない治療を押し付けるのはよくないのは明らかだと思います。ただ炎症が持続することの弊害は共有すべきだと思います。世界的にもステロイド軟膏塗布が標準治療ですが、相談の上、ステロイド以外の治療を患者さんが強く希望した場合、それを尊重すること、ただ、ある程度の効果判定の期限は設けることが必要ではないかと思います。

歴史がある問題であり、難しいですが、今の私の考えになります。また、勉強して有用な情報がありましたら、アップしたいと思います。

 

 

 

卵アレルギーと来年度の負荷試験の試案

ついに乳幼児の3大アレルギー食材に触れます。実はボリュームが多いので敬遠してました。困っておられる方が多いのも事実だと思います。

0〜19歳までの食物アレルギーの原因食物として1位の座に君臨するのが鶏卵です。アレルギーの原因となるのは、ほとんどが卵白中のタンパク質です。その中でも最もアレルギーを起こしやすいタンパク質がオボムコイドです。具体的な名前を挙げたのは、オボムコイドは血液検査で抗体が測定でき、負荷試験の是非の参考になるからです。卵黄摂取でアレルギー症状が出現しても、ほとんどは卵黄に混入した卵白成分が原因と考えられます。ウズラやアヒルなど他の鳥類の卵にも反応する可能性はありますが、魚卵には反応しません。

症状としては他の食品に比較して、腹痛、嘔吐、下痢などの消化器症状が多い傾向があります。

成長とともに治りやすい食材で、3歳までに約30%、6歳までに約70%が症状がでなくなります。治りにくくする要因としては「アナフィラキシーの既往」、「他のアレルギー疾患の合併」、「抗体の値が高いまま推移」が挙げられています。逆にオボムコイドに対する抗体の低下は食べることができるようになってきている可能性を示唆します。

検査に関しては、もちろん、卵白・卵黄、オボムコイドに対する抗体を測定し、参考にします。抗体が高い場合は微量からの負荷試験を考慮します。乳児は卵アレルギーがあっても抗体が陰性になることがあります。その場合は皮膚試験が有用です。皮膚試験までして陰性なら、「う〜ん、大丈夫じゃないかな」と心の中では思ってしまいます。卵アレルギーが治りやすいのは「微量でも摂取継続できていること」、「オボムコイドに対する抗体が低下してきていること」です。ですから、負荷試験を行い、少しずつ食べることができる量を増やして行くのが大切です。

下記は現在試作中の負荷試験の方法です。通常は1日で4回くらいに分割して、少しずつ増やして食べていく検査ですが、システムが整うまでは2回に分割まはた1回で食べる方法を検討しています。ステップ0から開始し、症状が出現しなかったら、1ヶ月程度間隔をあけて次のステップの量の負荷試験を行う方法です。
各ステップをクリアするごとに下記のような加工品の参考資料を使おうと思っています。クリアしたステップの量以下の卵を含有する加工品です。次のステップの負荷試験まで継続した摂取を行う一助になるようにですね。微量の場合は家庭で作るのも難しいので加工品を上手く取り入れていくのがいいと思います。

ガイドラインにも銘記されている「食べられる範囲で食べていく」です。きちんと細やかな指導をして定期的に食べれる量を食べ、少しずつ食べれる量を増やしていった群はそうでない群より1年後に食べることができる卵の量が多かったというのが下の報告です。

卵の抗原性(アレルギーを引き起こす力)は調理法で変化します。加熱の条件では固ゆで卵でも12分の加熱では11.8%、20分の加熱では6.1%にオボムコイドの抗原性は低下します。加熱時間の短い炒り卵ではオボムコイドの抗原性はほとんど低下しません。また、加熱に加えて、小麦が加わることでさらなる抗原性の低下があります。クッキーやカステラ、パンなどでは実際に使われている卵の量より抗原性は低下しています。しかし、実際どれくらいなのかと具体的な話はできません。ですから、卵の抗原性の話は難しいのです。

卵は理想的なタンパク源です。除去が必要な場合は動物性・植物性タンパク質で補いましょう。赤身の肉や魚(ヘム鉄も豊富)、大豆や乳製品を意識して摂取しましょう。卵黄には鉄も多いので、鉄分の摂取も大切です。調理面での置き換えは①起泡性→重曹、 ②凝固性(つなぎ)→豆腐+片栗粉、すりおろしたイモやレンコン、牛乳(豆乳)にひたしたパン粉(米パン粉)などを利用します。

基本的に除去の必要がないものとしては、鶏肉、魚卵、卵殻カルシウムです。逆に卵に含まれる塩化リゾチームが総合感冒薬、鎮咳薬、外用薬に含まれることがあるため、使用しないよう注意してください。

また卵アレルギーに関してはまとめなおします。